2006年08月20日

『マチルダはちいさな大天才』

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これ!文句なく面白いっ。




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ダールの名前を知ったのは、確か中学一年のとき。
担任が話してくれたのかなあ。
それとも、国語担当の先生だったか。

それはもちろん『あなたに似た人』(原題"Someone Like You")についてでした(ごめん、未読です)。

でも、ひとに勧められたものよりも自分で読みたい本を選びたいわたしにとっては、その情報はほとんど右から左。
それに大人向けの小説ばかり書いているものだと思い込んでいたのですね。


ちゃんと読んだのは、それこそ子どもたちへの読み聞かせを始めてからです。
翻訳ものの面白さを知ったあとだったので、金原さんが紹介する作家以外にも俄然興味が湧いたというのも一因です。

図書館では児童書の「イギリス・アメリカの作家」の棚を特に舐めるように見回し、手当り次第に広げては絵がなくても読み聞かせて楽しいものを探しました。


そのときはじめてロアルド・ダール『へそまがり昔話』を見つけ、ぱらぱらっと読んでみたところですぐにはまり込んでしまい、借りずに買ってしまいました。

そのうちに『チョコレート工場の秘密』の映画化により、ダールの本は一気に改訳されたりと未だブームが続いているようです。
ということで、わたしも見かけたら借りる、を繰り返しています。






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冒頭のマチルダはいつもいつも図書館で見てはいたものの、読もうかなあ、どうしようかなあ、と迷っている間に新訳が出て、さっさと放出されてしまった旧訳本。
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新訳というか多少手を入れてあるコレク
ション版の『マチルダは小さな大天才』
を借りて読んだらほんとに面白くて、け
ど、クウェンティン・ブレイクの絵が大
きい単行本がほしくなって、ユーズドで
359円で手に入れました。
それがまたきれいな本で嬉しいったら。




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ダールの作品はどれもブラックユーモアが漂います。
児童虐待の場面も、独裁者である女校長への仕返しの場面も、こんな表現の本を子どもに読ませちゃっていいの?と思う大人がいても不思議ではありません。
ほかにも身障者への配慮が足りないとかいう意見もあるようです。

けれども、ダール自身も身障者です。
第二次世界大戦で戦闘機に乗り、その墜落によって背骨を痛めました。
自虐ではなく、より面白くするためのユーモアだというふうにわたしは受け取ります。
表現を柔らかくすれば誰も傷つかないのかという問題はいつでもつきまといます。
しかし、奥歯に物の挟まった言い方では通じないこともあるし、特に子どもだから隠さなくてはいけないような事柄ならば、大人にとっても同じことではないでしょうか。

事実をありのままに子どもに伝えることの方が、たいせつなのではないでしょうか。
大人は自分が説明しにくい事柄から、逃げているだけなんじゃないのかな。


残酷な場面も賛否あるのですが、ダールの作品に限っては必要不可欠な要素でしょう。
特に子どもは、大人という得体の知れない怪物と日夜戦っているといっても過言ではありません。


「その相手をより卑劣で醜悪に描けば、こてんぱんにやられる場面が盛り上がります」


『まるごと一冊 ロアルド・ダール』の中の「作家を志しているみなさんへ」というページで、ダール自身も語っています。
ええ、いままで何冊か読みましたが、理不尽な大人に対して子どもが仕返しを決めたとき、どれもぐーんと溜飲が下がりました。


もちろんマチルダもやられっぱなしではありません。
ここには、いろいろな事柄に対するダールの抵抗が感じられます。

これ以上はあんまり話すとつまんなくなってしまうので、ぜひご自分で読んでみることをお勧めします。







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kmyさん『マチルダは小さな大天才』というエントリで触れられていますが、マチルダの「子どもの本にはこっけいみがなければならない」という意見には大賛成♪
なにしろ作中ではトールキンとC・S・ルイスについて、「こっけいみが足りない」と喝破しちゃうのですから。

それだったらいま話題の『ゲド戦記』の作者アーシュラ・K・ル=グウィンに対しても同じことを言うかも!

お盆の最中に公式HPでのコメントを紹介しているサイトを見て、「何で作者本人と細かいところまで詰めて話し合わなかったの???」と思ったし、このすれ違い自体はこっけいだよねとかも思ったりして、まあ、原作を読んでるものとしてはアニメ化はやめて〜という気持ちもあったり。
ジブリ映画「ゲド戦記」に対する原作者のコメント全文という翻訳のページもあるので、興味のある方はごらんのほどを。
作家の川端裕人さんなんて、「悲しい、不幸だ」を連発しています。
わたしはそうは思わなくて、それは起こり得るんじゃないかと(それは、鈴木敏夫プロデューサーが「売りたいものを作らせた」のが原因だと思っています)。
それって作者本人にも「こっけいみ」が足りないせいなんじゃないかとも。
売り言葉に買い言葉的な行動ではなくて、「ハヤオ、これってどういうこと?」って、直接聞くのが筋だと思いますけどねえ。

誤解のないように言えば、これは決して馬鹿にしているんじゃなくて、ちゃんと話せばいいのにという気持ちなのです。







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話題がそれました。

ではきょうの締めはこちらで。



年をとったら

年をとって、少しくたびれた時
こう思えたらよいものだ
子どもたちやみなさんを、
少しの間笑わせた
仕事も勉強も忘れさせたとね。


『まるごと一冊 ロアルド・ダール』p.444より)





ロアルド・ダール公式サイト→http://www.roalddahl.com/
  これはまた楽しいサイトです♪
  あのキャラクターもこのキャラクターも動いてますよ!

クウェンティン・ブレイク公式サイト→http://www.quentinblake.com/
  わたしゃブレイクのお顔を初めて知りました。
  Biographyのページをどうぞ。


posted by おかめ at 23:22 | Comment(11) | TrackBack(0) | 読む
この記事へのコメント
ごめん、じぇんじぇん関係ないけど

「機動戦士・ガンダム」でマチルダ中尉がでてきたのね。

まったくもって申し訳ない。関係なかった(爆
Posted by ちゅうさん@100均 at 2006年08月21日 08:16

>>ちゅうさん
まったくもって期待通りのコメントをありがと♪
マチルダさん、きれいでかっこ良かったねえ。

このマチルダだってアタマはいいし、おかしな大人たちをやっつけちゃうのよ。
これはぜひ子どもたちに読んであげないと。

大人の方がマチルダに惚れ込んじゃうよきっと!
Posted by ヤヤー at 2006年08月21日 14:22
フムフム・φ(..)メモメモのカキカキ・・・と

我家の財務兼文部大臣に、ご推薦申し上げておこう(^^♪
Posted by 泰皇夢@マスオ at 2006年08月21日 14:25

>>泰皇夢さん
一年生にはちょっと分量が多いかも知れませんが、げらげら笑っているうちに終わっちゃうかも。
ろくに子どもの面倒を見ない親とか、体罰バシバシの先生が出て来たりします。
泰皇夢さんも一緒に読んで貰えばよいのに♪

あ、そんなことより絵日記用に釣りに行かれるんでしたね。
あくまでも絵日記用に(大爆

気をつけてね〜。
Posted by ヤヤー at 2006年08月21日 14:38
面白そうな本ですね。とりあえず図書館で探してみます。
Posted by オカダ at 2006年08月21日 17:20


>>オカダさん
ダールの子ども向けのものはどれもほんとに面白いです。
わたしは「あっはっは」と読むだけですが、kmyさんという方は原書や旧訳と新訳の比較もなさっていて、その考察もとても面白いんですよ。

差別表現と嫌われている文章もありますけれど、筒井康隆が読めるひとなら大丈夫です。
彼も、隠したり遠回しに言えば良いという考えは嫌いでしたね。
ダールにもそういう部分を感じます。
Posted by ヤヤー at 2006年08月21日 20:55
TBありがとうございます。『マチルダ』、楽しく読まれたご様子で、嬉しいです。わたし自身は本を持っていませんが(汗)時々借りては返す、という本で何度か借りています。
痛快という言葉が似合う本だなって思います。嫌なやつはとことん嫌な感じに書くというのが、逆にいいのでしょうね。
『まるごと一冊ロアルド・ダール』もダールを読破してから読むともっといいでしょうね。まだ読んでいないものがいくつもあって。
大人向けの短編なども読み出しましたが、図書館になく文庫は買わないと読めないかも……とAmazonユーズドをちらちら見ています。
『ゲド』は数年前に挫折して河合隼雄さんのエッセイで触れている要点しかしらないのですが、『ハウル』の映画をテレビで見たときに、あれ、こんなのだっけ?と思いました。すっかり忘れているはいるのですけども。好きなものが映像化という解釈にかかり、多くの人びとに一過性の楽しみとして消費されていくのは残念に思うことがあります。
『ゲド』もやっぱり機会あれば読もうかな、と思う記事でした。
Posted by kmy at 2006年08月22日 16:30
ヤヤーさん、はじめまして。
『マチルダ』は本当に読んで楽しい作品ですよね。その面白さは、マチルダがあの手この手で意地悪な大人たちにやり返すということだけにとどまらない、さまざまな面白さがあると思っています。とにかく、引き出しの多いこと。読むたびに新しい発見があることでしょう。
この作品がすぐれている点は、子どもが主体性に富んだ生き生きとした個人として描かれているということです。大人の理不尽な暴力に対しては、きっちりお返しをしてやらなくてはならないということ、それは私たちをとりまく社会に対しても言えることです。リストラ合理化で職を失ってしまうとか、戦争で殺されてしまうとか、世の中にはありとあらゆる困難が存在します。そういう困難に立ち向かっていくことが必要だということを『マチルダ』は示しているだろうし、またそういうものとして『マチルダ』は読まれなくてはならないと思っています。
子どもが最初に直面する社会生活はやはり「学校」です。「学校」をめぐる問題、「教育」をめぐる問題は、それこそ子どもたちにとっても大問題だし、大人にとっても大問題です。そういった普遍的なテーマをもった作品として『マチルダ』は書かれています。
さらに話を展開しますが、子どもを主体性に富んだ生き生きとした、批判精神に満ち溢れた個人として育てていくこと、それが現在改悪されようとして教育基本法の精神にほかなりません。
日本国憲法に関する本も今いろいろお読みになっているそうですね。日本国憲法の精神のひとつとして、個人の尊厳を尊重するということがあります。個人の尊厳の尊重を教育上保障するものとして、教育基本法が存在しています。憲法と合わせて、教育基本法も読んで見てください。きっと新しい発見があると思いますよ。
教育基本法について、ほるぷ出版から『11の約束―えほん教育基本法』という本が出ています。きっと参考になると信じています。
Posted by koi at 2006年08月22日 21:41


>>kmyさん
この本を紹介頂いて良かったです。ありがとうございます♪
わたしはもっと早くこの本を読んでおけば良かった!と痛切に思いました。
子どもの頃に出会っていたら、もっと違う感想を持っていただろうし、読み直したらもっともっといろんなことを考えていただろうと。
仕返しするだけではなく、我慢することを教えているのもこの本の魅力です。ただやり返すのではなく、いかに効果的に相手をやっつけるかを、見て、考えて、訓練して、実践します。
作戦が当たったときにはそれは子どもじゃなくたって嬉しいですよね♪

『ゲド』は、それこそ宮崎駿監督が薦めていた本だから読んだというのが真相です。
小学生の頃は、あの表紙とタイトルがイヤで、何度も図書館の棚から出しては戻し、を繰り返したまま卒業してしまいました。
それなのに、読み始めたら一気でした。特に二巻がすきです。テナーが登場します。それは一巻を読んでるからすきなんですけど。
ちょうど第五巻『アースシーの風』が出た頃でもあって、全巻続け読めたということが何よりでした。
kmyさんも機会がありましたら、ぜひ。
同じく宮崎監督が薦めていたからといって読んだものに、ローズマリ・サトクリフの『第九軍団のワシ』があります。
こちらもこっけいみが足りないと喝破されそうな作風ですが、わたしはどうしたってそういう本も好きみたいです(笑)。がーっとシリーズを揃えてしまいましたから。

ダールの『少年』を読んでみようかなと思っています。
彼の自伝的小説だということなので。
『まるごと・・・』は、ほんとにダールを読破しないとわからない事柄がありますが、知らなくても楽しめるというか、どんどん読みたくなりますよね。
ダール追悼記年出版といったところなのでしょう。
こちらはなかなかユーズドで放出・・・というわけにはいかないようです。いいお値段(笑)。



>>koiさん
いらっしゃいませ♪
いつもkmyさんのところで興味深いコメントを拝見しておりましたので、こちらにもお越しいただき嬉しいです。

 >子どもを主体性に富んだ生き生きとした、批判精神に満ち溢れた個人として育てていくこと

いまや大人もつま弾きにあうのを恐れて意見の交換をしないようになってしまっています。そうではなくて、議論することの有用さをもっとみんな知った方がよいのにと思うことがしばしばあります。
教育基本法にそういう精神があったことは、よく理解していませんでした。koiさんのお勧めの本も探してみます。
こうして個人がもっと学習して、知識という力をつけて、おかしなことにはおかしいといえなければ成熟した社会ではあり得ないと思っています。
「おかしい」と声を上げると無視され、潰されてしまうような現代社会は病んでいるのですよね。
三浦朱門さんのいう「ひとりのエリート」よりも「百人の凡人」が優れていないとは誰にも言い切れないのに、数の上では圧倒的に多くても、世の中を変える力がないのは悔しいです。

子どもを主体性に富んだ生き生きとした個人として描く作家に、日本では古田足日さんが当てはまるでしょうか。
ダールと同じく多作で、そのどれもが子どもがいきいきとしていますし、登場する大人も魅力的です。
「すぐれた児童文学にはすぐれた大人が多数登場する」という中川李枝子さんの言葉を思い出します。

わたしはなりたい大人の姿を見つけたくて、子どもの本を読み続けているのかも知れません。
Posted by ヤヤー at 2006年08月23日 00:04
ダールの『少年』(ハヤカワ文庫)もおすすめです。赤木かん子さんの解説も秀逸です。赤木さんのロアルド・ダール論といったものが展開されていると思います。もちろん『マチルダ』についても触れられていますよ。ダールのパブリックスクール時代の経験が『マチルダ』に強く反映されているということです。
Posted by koi at 2006年08月24日 23:54


>>koiさん
わお♪これは買いですね。

『まるごと・・・』をめくっていると、あれもこれも読みたくなってしまうんですけれども、いまのところは『マチルダ』がわたしの中ではいちばんです。
背景を知ると、ますます好きになりそう。

情報、ありがとうございます♪
Posted by ヤヤー at 2006年08月25日 00:10
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